前日深夜のリハーサルからバカロボ2007は始まった。楽屋の一角に設けられた「バカロボ待機スペース」に、ところせましと集まった、8体のバカロボ。せまい。せますぎる。その せまい空間の横を、「おつかれさまでーす!」と大声で走り抜ける、新人よしもと芸人たち。なんだここは!最大公約数でバカ、としか言いようがない。
ステージではバカロボをモチーフにした、ゆるーいセットが着々と作られた。明和電機社長、土佐信道の設計。ゆるい。泥酔で半分口からよだれをたらしながら飲み屋のナプキンの裏でデザインしたとしか思えない…。
イベント開演の数時間前、本番に向けてバカロボエンジニアたちは調整を開始。ロボットの動きのコンピューター・プログラムを修正するもの、本体を軽くするため、発泡スチロールで作り直すもの、ロボットとの掛け合いを練習するもの。それは、「バカになるための、くそまじめな努力」という美しい光景。そんな修羅場の中、内気なみなさんも、お互いにバカロボを目指す同志として、技術論や、ロボット論などの会話もはずみはじめる。
吉本新喜劇が30分押しで終了。新喜劇のセットをばらし、バカロボのセットを組立て開始。そして待機スペースの全てのバカロボをステージにあげて調整。しかし準備がスムーズに進まず、なんと約1時間遅れで本番はスタート。
バカロボ2007テーマソング、「秋葉原☆キラリ」に乗せて幕が開き、いよいよ本番スタート。司会の南海キャンディーズの山ちゃん、そして審査員のみなさんが続々登場。全員席につくと、明和電機社長から、バカメーターの説明。
「この装置を頭にかぶると、みなさんが感じたバカ度がメーターの針の動きでわかります。ただ、問題がありまして、頭の上なので、自分のメーターを見ることができません。そこで、それを見るための手鏡をご用意しました。」
審査員全員が、手鏡で自分を見る光景に、客席全体が「あんたらがバカロボだ」・・・と思ったことだろう。
記念すべき第一回目のバカロボは、バリエーションあふれるロボットたちが勢ぞろいした。 女子高生から定年を控えたサラリーマン、100円ショップの材料でできたものからコンピューター制御の複雑なロボットまで、さらにはケニア出身の出場者と、このコンテストが目指している「ロボットの多様性の探求」というテーマが、まさに現実となった。
カーレースはスピードが一番速い車が優勝となる。それは「機能性」のコンテストである。しかし「バカ一番を決める」というのは測定ができない。そもそも「バカという機能」とは何か?ということ自体、いろいろな定義がある。そのため、審査も大変であった。
そんな中、優勝したのは「キントレーZ」。キントレーZのデザインは、アトムやマジンガーZのパロディである。アニメの中では自由に動くそれらのロボットが、3次元のメカニックな存在になったとき、「動くと壊れる」ということになる。それは、イメージばかりがが肥大してエンジニアリングを失っている、今日のロボットカルチャーへのパロディの要素を含む。少々ブームが終わった観があるが、アメリカ式トレーニング法の演出もあり、総合点で文句なく面白かった。
さて、この「キントレーZ」と、最終的に審査で争ったのが、「プッシュ君」であった。プッシュ君は、4足歩行によって、2足歩行ではありえなかった動きや面白さを表現した、「バカ工学系ロボット」である。高い技術力と綿密な運動プログラム、それをプレゼンする完成度と、大阪の食いだおれ人形などが持つアホアホロボットの系譜もあった。
おそらく日本のロボット文化を生んだ背景は2つある。ひとつはアニメや漫画に登場してきた「イメージのロボット」であり、もうひとつは産業ロボットからASIMOまでつながる「工学系ロボット」である。キントレーZとプッシュ君は、それぞれの分野から生まれたバカロボであり、審査ではその2体の一騎打ちとなった。
審査の結果、「ロボット単体で動いての面白さ」という基準で、キントレーZのグランプリとなった。プッシュ君は作者の岩気さんとの掛け合いが面白かった分、結果としては減点評価となったのである。しかし、プッシュ君の持つ面白さは単独でも十分成立するし、またはプッシュ君とコンビを組むもう一体のロボットがあれば最強となるかもしれない。
「優秀さをひとつ決めるのは、テストをすれば点数ですぐにわかる。しかしバカは多様なので、どれが優秀なのかは大変決めにくい。審査も大変むずかしかったのですが、グランプリを決定いたしました。グランプリは・・・・・キントレーZ!!!」
意外な受賞に驚く岡田さんと、そのチームのみなさんだったが、明和電機社長・土佐信道から、賞金50万円のでっかいボードが送られると、すぐに満面の笑みで優勝を喜んでいた。そんな優勝者を、ぎっしり埋まった会場からの温かい拍手が贈られる中、「バカロボ2007」はその記念すべき第1回の幕を閉じた。
それにしても8体のバカロボのうち、5体は関西からの出場であった。かつての日本SF大会の盛り上がりのように、関西はなぜかマニアックな面白いものに強い・・・ようである。
ゴミ箱型四足歩行ロボ。中央前部のセンサーでゴミを捉え、前足で口の中に放り込むと、ただちに口の中にある通称「奥の手」が、ゴミを再び外に放り出す。四足歩行を生かした「馬歩き」、体そのものを叩いて芸をする「ポコポコボディ」など、独自の「ネタ運動プログラム」を多数持つ、まさに大阪系お笑いの王道を行くアホロボ。
崩壊型アスレチックロボ。健康器具=「体を鍛える機械」の逆説である、「機械が体を鍛える」がテーマ。アトムやマジンガーZに通じるジャパニメーションのロボットデザインでが、できることは腹筋のみ。しかも運動をしながら体が崩壊。ただし逆境になればなるほど「努力エネルギー」が充填し、「キントレー」から「キントレーZ」にチェンジする。
エアー制御型生命体ロボ。空気圧で動くゴムでできた人工筋肉を、音声合成した人間の声を発するインタフェースで制御。見た目はまさに「オチン0ン」、または「ウ0チ」であり、スタンダードなASIMO型ロボットデザインに真っ向から反逆。あまりの「18禁」なアダルトさに賛否両論。存在意義さえよくわからないバカロボ。
怪獣型ずっこけロボ。「イナバウアー」をするためだけに開発された、怪獣型ロボ。制作者のマセセ・タイタス氏(ケニア出身)の「陽気な設計思想」を反映し、迫力のある怪獣型ボディ(ただしダンボールと木)、口からフリスビーを飛ばし(ただしそんなに飛ばない)、イナバウアーのようにのけぞり倒れる(ただし二度とは起き上がれない)。
女子高生ヘナチョコロボ。神戸に住む女子高生二人が作ったロボ。カキールXはマイコンプログラムで二本の歯ブラシを動かし、痒いところを掻くロボット。JUNKO2007は同じくマイコンプログラムで地震の初期微動から本震までをシュミレーションしたロボ。ただし見る人に「いったいどこをプログラムしたのか?」という疑問を抱かせるバカロボ。
メイド型二足歩行ロボ。リアル系ロボットが人間とコミュニケーションをするときに発生する「不気味の谷」といわれる問題を、「萌え」の記号を用いることで克服しようとする意欲作。「メイドさん」と「ロボット」と「フィギュア」は、おたくにとってはまさに「三位一体」であり、秋葉原のマリア的偶像を予感させるが、客観的に見ればバカロボ。
妊婦型コーラスロボ。4体のロボットが、「ラマーズ法」の呼吸のようにヒーヒーフーと合唱。コントロールは、演奏者が体にとりつけた胎盤方鍵盤で行う。右の乳首でスイッチオン、左の乳首でボリュームを変える。このバカロボを演奏すると、演奏している本人が一番バカに見えるというバカロボ。
ポンコツ型二足歩行ロボ。「がんばれロボコン」から「ドラえもん」に通じる、ダメだけど愛着のあるロボットのデザインの流れを汲むロボット。「プッチョ」という声を出しながらヨタヨタ歩き、旗揚げゲームでまちがいをし、最後は、バックで歩くのを失敗して倒れて体が分解。「ああ、心配で見ていられない!」という、母性本能をくすぐるバカロボ。